ワシントン・ポスト紙(2003年3月26日)によると、3月24日、パトリオット・ミサイル迎撃システムが、米軍機F−16に照準を当て、「ロックオン」する事件が起きたとのことです。F−16は、パトリオット・システムのレーダー・ディッシュに向けて高速ミサイルを発射して破壊して、難を逃れたということです。
事件がおきたのは、イラクのナジャフ市の南に約50kmのところです。ちょうど、パトリオットの部隊がイラク軍から攻撃を受けていたため、兵士らは避難していたため、F-16の発射したミサイルの被害に遭わずにすんだということです。23日には、英国空軍のトーネードGR4戦闘機がクウェート国境近くでパトリオットに撃墜され乗員二人が死亡するという誤射事故が起きたばかりでした。システムのソフトウェアーに深刻な欠陥があるのではとの懸念が生じているとワシントン・ポスト紙は述べています。
記事からは、関係したパトリオットがPAC3(パトリオット能力発展型第3段階)という新しいシステムなのか、PAC2(パトリオット能力発展型第2段階)なのかは、わかりません。また、この記事は、これまでイラクが発射した14基のミサイルの内6基をパトリオットで撃墜したとの米国国防省の説明を引用しています。
ニューヨークタイムズ紙(2003年3月23日)は、米軍の発表を下に、その時点までに米英軍に対して発射されたミサイル6基のうち4基の迎撃に成功したのは、PAC3だと報じています。
「防衛情報センター(CDI)」2003年3月25日付けの文書「パトリオット:これまでの成績」は、今回の戦争では、次の4種類のパトリオットが配備されていると説明しています。
- PAC2 1991年の湾岸戦争の際に使われたもの
- PAC2(GEM=誘導向上ミサイル) レーダーのレシーバーや爆発の反応速度を改善したもの
- PAC2(GEM+) 2)をさらに改良したもの
- PAC3 ミサイル用に新たに開発したも
CDIの同文書は、イラクが発射した14基のミサイルのうち、6基がパトリオットによって迎撃されたと報じられていると説明した後、次のように述べています。
「『オペレーション・イラクの自由』では、4つのシステムすべてが使われているようだが、パトリオットの最新のもっとも進んだバージョンであるPAC3は、迎撃の試みのうちの数件にのみかかわったようだ。」また、パトリオットは、敵のミサイル1基に対して、1基だけ発射するのではなく、何基か続けて発射する「リプル(波状)発射」の方式をとっていると指摘しています。つまり、たとえ敵のミサイルを全部打ち落としても、百発百中というわけではないということです。CDIは、また、敵のミサイルが無人地帯に飛んでいっている場合は、相手にしないことによって、パトリオットの「節約」もしているとも述べています。
日本は、海上発射のミサイル防衛システムとともに、PAC3の導入も検討しています。ノドンは、射程約1300kmで、今回イラクが発射している射程150−200kmのミサイルより速度がずっと速いものです。速度の遅いものを撃ち落とし損ねたり、味方の飛行機を撃ち落としたりする点を注意して見ておく必要があります。
参考:PAC3関連データ
パトリオット・ミサイルでノドンを迎撃?