2月2日、米国エネルギー省が今年10月から始まる2005年会計年度のエネルギー省予算案(原文)を発表しました。同省が責任を負っている核兵器の開発・維持・管理・改善関連の予算について簡単にまとめておきます。
昨年末に2004年度予算が確定した際にこのサイトに載せた「米国2004年度予算と新型核兵器」で検討した新型核関連項目をみると、05年度予算要求ではつぎのようになっています。それぞれの項目の持つ意味合いについては、上記の04年度予算の解説の方をご覧ください。(一部数字を訂正しました。)
- (1)先端概念イニシアチブ(900万ドル)
- (2)堅固な地中貫通型(RNEP)(2755万7000ドル)
- (3)核実験準備態勢維持・改善(3000万ドル)
- (4)「最新型ピット生産施設(MPF)」設計作業(2980万ドル)
エネルギー省予算総額243億ドル(04年度実施より38億3000万ドル、4.4%増)のうち、核兵器を扱う部門「国家核安全保障局(NNSA)」の予算が約90億ドル。
NNSA予算の内訳はつぎの通り。
- 1)兵器活動 約66億ドル(3億3500万ドル増)
- 2)国防核拡散防止 約13億5000万ドル(1500万ドル増)
- 3)海軍原子炉 約7億9800万ドル(3600万ドル)
- 4)局管理 約3億3400万ドル
1)の中に「Directed Stockpile Work(維持管理計画)」(14億643万5000ドル)というのがあって、これが各種核弾頭の具体的維持管理に当てられる部分。この中に(1)、(2)の二つが入っている。
- (1)先端概念イニシアチブ(900万ドル:04年度は600万ドル)
新しい概念を検討するもので、この中に低威力のものも入り得る。 - (2)堅固な地中貫通型(RNEP)(2755万7000ドル:04年度は1500万ドルを要求したが、認められたのは約半額の743万5000ドル。05年度のものは、このカットされた部分を入れて、さらに少し上乗せしての要求額。これは数百キロトン・レベルの威力を持つもので、(1)で問題になっている低威力(5キロトン以下)のものとは直接関係ない。)
1)には、科学キャンペーン(Science Campaign)という項目もあって、その中にある「主要評価技術(Primary Assessment Technology)」が(3)を含んでいる。
- (3)核実験準備態勢維持・改善(3000万ドル:04年度は2474万4000ドル)
これは、核実験実施の大統領命令があってから2−3年以内に実験できる現態勢の維持と、この準備期間を18ヶ月に短縮するための準備態勢改善計画用とが含まれる。「維持」の部分と「改善」の部分が混在していて、分離不能となっている。04年度予算について議会調査サービスの報告書は「要求額2490万ドルのうち、現在の24−36ヶ月態勢を維持するのに少なくとも1500万ドルはかかるだろう。」
準備期間の短縮を目指しているからといって、具体的な実験の計画があるわけではない。また、実験の計画がでてくるとしても、それが、現存の核弾頭に関連した爆発実験となるのか、新型核開発のためのものとなるのかは分からない。
1)にはまた、(4)も入っている。
- (4)「最新型ピット生産施設(MPF)」設計作業(2980万ドル:04年度は2280万ドルの要求を1080万ドルに削減された。)
(ピットは、プルトニウムからなる芯の部分。2018年に年間450−900個の製造能力を持つことを目指す。)
これは、ピット製造・認証計画(3億3647万ドル)の一部。
1989年にロッキーフラッツの施設の閉鎖でピット製造能力を失った米国は、現在ロスアラモス研究所のプルトニウム施設TA55で年間10−20個の製造能力を目指して作業が行われている。この施設では、04年度にW88型弾頭用ピットを認証可能なかたちで6個製造、05年度にはさらに6個製造する計画。これらのピットを使った様々な測定・実験により07年度までに実際の認証ができる態勢を確立することを目指している。TA55は、暫定的施設で、MPFによって本格的な製造能力を得たいというのがエネルギー省の計画。