核情報

2005.2.18

NPT・六ヶ所問題の基礎知識:解説1


六ヶ所村「核燃料サイクル施設」

青森県六ヶ所村にある施設で次の4つからなる。


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再処理

原子炉からでてくる使用済み燃料を化学的に処理して、

の三つに分けること。

  • 再処理の工程

  • 世界の再処理施設

    現在商業規模のものを運転しているのは、英・仏・ロのみ。後は、インドが小規模のものを持っているだけ。六ヶ所再処理工場が運転に入れば、非核保有国として初めてのケースとなる。

  • 世界の再処理工場


  • 海外委託

     これまでは東海村での少量の処理(1977年9月から2003年末までに1009トン)を除いては、海外に委託していた。 英仏合計 7100トン(軽水炉約5600トン、ガス炉=東海原発約1500トン)

  • 2001年6月までに全量英仏に輸送済み。

  • 核拡散問題を除く再処理推進・反対の議論


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    ウラン試験

    再処理工場において、劣化ウランを使って行う稼働試験。酸化ウラン粉末を使った試験の後、本物の使用済み燃料の代わりに模擬ウラン燃料を使った剪断試験などに進む。

    六ヶ所再処理工場では、2004年12月21日、ウラン試験が始まった。仕上げのウラン総合確認試験は、10月の予定。


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    アクティブ試験

    再処理工場において、実際の使用済み燃料を使って行う稼働試験。施設の放射能汚染という点でウラン試験とは比較にならない段階。本格運転が年間800トンの使用済み燃料を処理する計画であるのに対し、、アクティブ試験は、約430トンも使うことになっており、量からいうと事実上の操業に等しい。

    アクティブ試験で使用する使用済燃料の量 出典:日本原燃プレスリリース(pdf)

    型式体数tU
    BWR約1250約220
    PWR約460約210
    合計約1710約430

    *量については概算値であり,試験計画の進捗により変動がありうる。

    日本原燃は、11月18日、アクティブ試験の開始時期を、2005年12月から2006年2月に、操業開始時期を2007年5月から2007年7月にそれぞれ変更すると経済産業省に届け出た

    なお、年間800トンの本格運転に入るのは2011年度の計画である。

    使用済燃料の取得計画及び予定再処理数量 (単位:t・Upr) 出典:日本原燃プレスリリース(pdf)

    年度19981999200020012002200320042005200620072008200920102011
    H10H11H12H13H14H15H16H17H18H19H20H21H22H23
    取得計画824963403120524434550550650800800800
    予定
    再処理数量
     15258392440600760800
    貯蔵量83212846878078013041723201521732383258326232623

    注:・t・Upr は照射前金属ウラン質量換算です。
    ・1998(H10)年度から 2004(H16)年度までは実績値です。
    ・今年度の使用済燃料の取得計画については 575 t・Upr から 434 t・Upr に変更して います。(9 月 14 日お知らせ済み。)
    ・貯蔵量は輸送容器(キャスク)に収納されている使用済燃料も含みます。

    (参考) 平成17年3月に公表した計画 (単位:t・Upr)
    年度19981999200020012002200320042005200620072008200920102011
    H10H11H12H13H14H15H16H17H18H19H20H21H22H23
    取得計画824963403120527575550550600800800800
    予定
    再処理量
           34358326467627787800
    貯蔵量83212846878078013071848204022642397257025832583

    注:・t・Uprは照射前金属ウラン質量換算です。
    ・1998(H10)年度から2003(H15)年度までは実績値です。
    ・貯蔵量は輸送容器(キャスク)に収納されている使用済燃料も含みます。

    (参考) 平成15年9月に公表した計画 (単位:t・Upr) 出典:日本原燃プレスリリース(pdf)
    年度1998199920002001200220032004200520062007200820092010
    H10H11H12H13H14H15H16H17H18H19H20H21H22
    取得計画82496340312116500500800850850800800
    予定
    再処理量
           30270350480640800800
    貯蔵量8321284687808961366159620462416262626262626

    注:t・Uprは照射前金属ウラン質量換算です。
    貯蔵量は輸送容器(キャスク)に収納されている使用済燃料も含みます。





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    ウラン濃縮

    天然ウランの中に少量(0.7%)しか含まれない核分裂性の(燃えやすい)ウラン235の割合を遠心分離法、ガス拡散法などの工程によって高めること。


  • 遠心分離法
  • 天然ウランのほとんどは、ウラン238からなる。現在一般的に使われている遠心分離法では、6フッ化ウランというガス状にしたウラン化合物を洗濯機のような回転体(遠心分離器)に入れ、遠心力を利用して、外側に重いウラン238、真ん中に軽いウラン235を集める。ウラン235の含有率が少し高まったガスを次の遠心分離器に送るという形で、同じ過程を繰り返してウラン235の含有率を3−4%にすると世界で一般的に使われている軽水炉の燃料に使える。核兵器用には、さらに濃縮を繰り返してウラン235の含有率を90%以上に高める。(ただし、広島に投下された原爆の場合は、平均含有率が80%程度だった。)


    世界のウラン濃縮施設

    日本以外で単独で商業用ウラン濃縮工場を運転しているのは、核保有国の米・ロ・中。その他は、核保有国の英・仏が絡んだ多国間経営。

    六ヶ所村のウラン濃縮工場は、現在の1050トンSWU(分離作業)/年の体制でフル操業すれば100万キロワット級原発9基の年間必要量を1年の操業でまかなえるという規模。最終的には、1500トンSWU/年の体制を目指している。しかし、現在の公称能力のうち、450トンSWU/年は停止されており、実質的には600トンの状態であり、最終目標達成となるかどうかは不透明。



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    MOX(混合酸化物)燃料

    再処理で得られた酸化プルトニウムと酸化ウランを混ぜて作る燃料。
    酸化ウランの方は、天然ウラン、回収ウラン(再処理の際に回収されるもの)、劣化ウラン(ウラン濃縮過程で副産物としてでてくるものでウラン235の含有率が低くなっている)などが使われる。

    この燃料を軽水炉に入れて使うのがプルサーマル。プルサーマルは、プルトニウムを熱(サーマル)中性子炉(普通の原子炉)で使うという意味の和製英語。元々、プルトニウムは熱中性子炉ではなく高速中性子炉(高速増殖炉)で使ってさらにどんどんプルトニウムを作る予定だったが、この計画が頓挫しているためにでてきた苦肉の策がプルトニウムを何とか燃やそうというプルサーマル。

    六ヶ所再処理工場では、プルトニウムと燃え残りのウランを混合粉末として取り出す工程となっているので、六ヶ所村にMOX工場ができた場合、これをさらに劣化ウランで希釈することになる。

    MOX工場は、1985年の会社側と青森県および六ヶ所村との立地協力基本協定には入っていなかったが、2001年8月、会社側が県および同村に立地協力を申し入れ、現在県と村による検討が進められている。計画では、MOX工場は再処理工場の南側に隣接して建てられることになっている。



    世界のMOX施設

    現在商業施設を運転しているのは、英・仏・ベルギーのみ。

  • 世界のMOX加工施設



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    原子力長期計画

    正式名称:原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画

    原子力に関する基本計画を定めたもので、現行の 「長期計画」 (平成12年11月24日)は、主として海外に委託してきた再処理を六ヶ所再処理工場で行い、それに続く再処理工場では、軽水炉使用済みMOX燃料の再処理もできるものとすることなどを謳っている。


    長計「軽水炉使用済燃料再処理 」該当部分

  • 3−4.軽水炉使用済燃料再処理

  •  我が国においては、軽水炉の使用済燃料はこれまで、核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設に委託された一部を除いて、海外の再処理事業者に委託され再処理されてきた。この間に、民間事業者は、国内におけるその需要の動向等を勘案し、核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設の運転経験を踏まえつつ、海外の再処理先進国の技術、経験を導入して、六ヶ所再処理工場を計画し、現在、2005年の操業開始に向けて建設を進めている。

     我が国は、核燃料サイクルの自主性を確実なものにするなどの観点から、今後、使用済燃料の再処理は国内で行うことを原則としており、民間事業者は、我が国に実用再処理技術を定着させていくことができるよう、この我が国初の商業規模の再処理工場を着実に建設、運転していくことが期待される。なお、この再処理工場や中間貯蔵の事業が計画に従って順調に進捗していく限り、海外再処理の選択の必要性は低いと考えられる。また、この問題については、国際輸送に伴う沿岸諸国の動向を考慮することが重要である。

     核燃料サイクル開発機構は、現在、東海再処理施設において、従来の再処理に加え、高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX燃料等の再処理技術の実証試験等を行うこととしており、これらの成果は将来に重要な貢献をもたらすと考えられるので、成果について段階的に評価を受けながら実施することが必要である。

     六ヶ所再処理工場に続く再処理工場は、これらの研究開発の成果も踏まえて優れた経済性を有し、ウラン使用済燃料の再処理を行うだけでなく、高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX燃料の再処理も行える施設とすることが適当と考えられるが、さらに、今後の技術開発の進捗を踏まえて、高速増殖炉の使用済燃料の再処理も可能にすることも考えられる。したがって、この工場の再処理能力や利用技術を含む建設計画については、六ヶ所再処理工場の建設、運転実績、今後の研究開発及び中間貯蔵の進展状況、高速増殖炉の実用化の見通しなどを総合的に勘案して決定されることが重要であり、現在、これらの進展状況を展望すれば、2010年頃から検討が開始されることが適当である。

    原子力長期計画  


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    新長期計画策定会議

    2005年中に新長期計画を定めるべく2004年6月から策定会議が行われている。

    再処理政策維持を支持する「中間とりまとめ」が2004年11月12日に発表された。

    原子力委員会新計画策定会議



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    再処理の圧力

    再処理問題を追いかけているジャーナリストらは青森県の意向が大きな圧力になっているという。青森県の主張は、再処理が実施されなければ、すでに各地の原発からの使用済み燃料の搬入が始まっている六ヶ所村が燃料の長期保管場所になってしまうから、それを防ぐために再処理をしろというものである。

    青森県は、再処理しない場合は使用済み燃料の施設外搬出も含め協議するとした日本原燃との1998年の覚え書きを盾にとる。六ヶ所をゴミ捨て場にするなということだ。

    だが再処理した場合、使用済み燃料は、放射性廃液やガラス固化体に形を変えるだけで、ゴミが六ヶ所に残ることに変わりはない。同じゴミなら容器を壊して中身をぶちまけたりしないでそっとそのまま保管しておいた方が無難だ。おまけに再処理すれば、放射能で汚染されてゴミとなった再処理工場が六ヶ所に残る。ガラス固化体はいずれ最終処分場に送られることになっているが、その場所は決まっていない。場所さえあれば、そもそも使用済み燃料をそのまま持って行って処分することも可能なはずである。

    再処理中止となれば、青森県による使用済み燃料受け入れ拒否、貯蔵中使用済み燃料の送り返し要求などという事態になりかねない。それは使用済み燃料の行き場がなくなるという問題を起こすとともに、地元との信頼関係を裏切ったという意味で各地の原子力関連施設を受け入れている自治体との信頼関係の崩壊につながりかねない。このことが再処理強行論の背景にあるという声を記者諸氏から良く聞く。使用済み燃料対策として再処理がいいかどうかという議論とは全く別の次元の問題である。

    東奥日報は「拒否カード/「凍結論」封じる重み」(2004年11月19日)と題する記事を次のような県知事の発言の引用から始め、青森県の圧力について解説している。

    「青森県は、あくまで国策として、全量再処理されることを前提に、六ケ所再処理施設に使用済み核燃料を受け入れており、万が一でもこれらが再処理されないとすれば、一体誰がどこで保管するでしょうか」(九月二十四日、新原子力長期計画策定会議)。 (上)拒否カード/「凍結論」封じる重み(2004年11月19日 東奥日報)

    次の記事も青森県の特殊な力について論じている。 中間貯蔵立地検討の遅れ、背景に県の発言力低下警戒感も (2005年2月13日 東奥日報)

  • 原子力産業会議は『再処理はなぜ必要か?−核燃料リサイクルに関する民間のポジ ション』 (2004年11月)で次のように説明している。
  • 六ヵ所再処理工場の運転が中止あるいは一時停止された場合は、我が国のエネルギー 政策の基本線を大変更することになるので、その影響は計り知れない。日本原燃は青 森県との間に「再処理事業の確実な実施が著しく困難となった場合には・・・使用済 み燃料の施設外への搬出を含め、適切な措置を講じるものとする」との覚書を結んで いる。同工場の運転が行われなくなった場合下記のような大きな混乱を招く事になる。

    1. もし六ヵ所への使用済み燃料の搬出が不可となり、さらに既に貯蔵されている使 用済み燃料が発電所に返還されてきた場合、原子炉サイトでの使用済み燃料プールの 能力が不足し、2015年には全ての発電所の運転が出来なくなる見通しである。
    2. 政策変更によって地元との信頼関係が崩れれば、海外から返還される高レベル放 射性廃棄物固化体の六ケ所施設への受け入れが拒否される可能性がある。海外からの 返還固化体受入れは、国際取引上の明文化された契約事項である。
    3. 同様に低レベル放射性廃棄物の受け入れが拒否され埋設処分が実施できなくなる。
    4. 再処理工場への建設投資額の回収ならびに廃止措置費用を要するのは言うまでも 無い。
    5. さらに、青森県において長年にわたって構築してきた地元との信頼関係が崩れれ ば、他の原子力施設においても、政府ならびに民間に対する信頼は大きく影響される であろう。
  • 原子力委員会は、『核燃料サイクルについて』 (第25回原子力委員会資料第1号 平成15 年8月、pdf)で次のように説明している。(128 / 171ページ)
    • 2−14 我が国の発電所の使用済燃料から回収されたプルトニウ ムを英仏に保有し、国内においてMOX燃料の使用先が確定しない 段階で、なぜ六ヶ所再処理工場の稼働を急ぐのでしょうか。現在の 状況で、いわゆるプルトニウム・バランスがとれるのですか。

      2−1、2−4で述べたとおり、国内における核燃料サイクルの 確立は、エネルギーの安定供給の確保のための手段であります。さ らに、核燃料サイクル事業を着実に進めていくことにより、 ・・・・
      (2)国内におけるいくつかの原子力発電所の使用済燃料の貯蔵プー ルの容量は既に限界に近づいており、2010年まで中間貯蔵 施設が稼動しないことを踏まえると、使用済燃料を着実に再処 理することにより原子力発電所の運転の円滑化が図られる

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    中間貯蔵施設

    使用済み燃料を原発の敷地以外の場所で数十年保管する施設。

    電力会社にとっては、六ヶ所再処理工場の使用済み燃料受け入れ・貯蔵プールは、実は、中間貯蔵施設。1998−99年の試験搬入を経て2000年から使用済み燃料の受け入れを始めている。

    しかし3000トンしか容量がない。2001年7月の貯蔵プールの水漏れ発見の影響で搬入が遅れていたが、2004年度末には、累積搬入量は約1300トンに達した。再処理が始まらなければ、この貯蔵プールは数年で満杯になる。そうすると行き場を失った燃料で満杯になる原発が2010年頃には数多くでてくる。

    3月28日、日本原燃は、2005年度に約575トン(2,510体)を受け入れるとの計画を発表した。そのうち、プールの余裕に問題を抱える東京電力福島第二原子力発電所からのものが約203トン(1178体)となる

    再処理工場が動き出せばこのプールに燃料を送り続けることができる。再処理されるかどうかよりも、発電所から使用済み燃料が送り出せるかどうかがポイントのようである。

    しかし、六ヶ所再処理工場がフルに稼働し始めてもその処理能力は年間800トン。現在約900トンの使用済み燃料が毎年発生している。発生量は将来はさらに増えていく。原発の運転停止を逃れるためには、いずれにしても中間貯蔵施設が必要だということになる。東京電力は、青森県むつ市に中間貯蔵施設「リサイクル燃料備蓄センター」(容量5000〜6000トン。運転開始2010年目標。貯蔵期間50年)の受け入れを要請している。県の専門家会議「安全性チェック・検討会」は、2月末にも結論を出す予定。

    各原子力発電所の使用済み燃料貯蔵量および貯蔵容量

    電力会社発電所名1炉心
    (tU)
    1取替分
    (tU)
    使用済燃料
    貯蔵量(tU)
    管理容量
    (tU)
    北海道電力10030290420
    東北電力女川26060280790
    東京電力福島第一5801501,3602,100
    福島第二5201401,2501,360
    柏崎刈羽9602501,8402,630
    中部電力浜岡4201108201,090
    北陸電力志賀602070160
    関西電力美浜16050360620
    高浜2901009401,100
    大飯3601201,0301,900
    中国電力島根17040330600
    四国電力伊方17060450930
    九州電力玄海2701006601,060
    川内14050630900
    日本原子力
    発電
    敦賀14040520870
    東海第二13030300420
    合計 4,7301,35011,11016,940
    (平成16年3月末現在 2004年版原子力白書(pdf)136ページより)
    注1)管理容量は、原則として「貯蔵容量から1炉心+1取替分を差し引いた容量」。
    注2)四捨五入の関係で合計値は、各項目を加算した数値と一致しない部分がある。


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    貯蔵プール水漏れ

    2001年7月、再処理工場の使用済み燃料受け入れ・貯蔵プールで水漏れが発見された。日本原燃は、当初、結露水が原因と判断していたが、同年末になっても、水滴の発生が治まらず、水漏れと判断して、調べたところ、不良溶接が原因だったことが判明した。不良溶接ヵ所は、291に上った。

    プールは、沸騰水型(BWR)原子炉使用済み燃料用、加圧水型(PWR)原子炉使用済み燃料用、両用の3つがあり、連結されている。水漏れが見つかったのは真ん中のPWR用だったが、調査の結果、溶接問題は他の二つのプールや工場本体にも及んでいることが明らかになった。日本原燃は、ずさんな工事を下請けのせいにしているが、この事件で、下請けに作業を任せっぱなしにして、品質管理を怠ってきた企業の体質が明らかになった。


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    再処理コスト

    再処理は高くつくことが明らかになっている。
    地下深くに処分する場合、使用済み燃料を直接処分すれば、再処理してから廃棄物のガラス固化体を処分する方式の半分のコストで済むとの試算を政府自身が行っていながらその存在を隠していたことが2004年7月に明らかになった。

    2003年11月11日、電力業界は、六ヶ所村の再処理コストが総額で約19兆円になるとの試算を提出した。再処理工場だけのコストは、建設・操業・廃止措置(2078年まで)を合わせて約12兆円。高レベル廃棄物の処分、輸送、中間貯蔵など「バックエンド」事業の総額が約19兆円との計算。再処理工場がフル稼働で操業し続けるとするなど無理のある想定が行われていること、最終処分場計画が確定していないことなどを考えれば、コストがこれより大きくなることはさけられないだろう。

    2004年10月22日、原子力委員会は、2002年−2060年度までの59年 間の発電に伴うコストをつぎの4つのシナリオについて算定した結果を発表した。 (上記のバックエンド事業コスト計算と比べ、期間が長く、再処理対象量が倍近くに なっている)


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    日本の原子力発電所

     2005年1月現在 53基 (浜岡5号炉が1月18日営業運転開始)


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    [世界の原子力発電開発の現状]

  • 2003年12月31日現在 434基


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    六ヶ所再処理工場でできるプルトニウムの量

    年間約8トン。国際原子力機関(IAEA)の計算方式に従えば、核兵器1000発分。 年間処理量が使用済み燃料にして800トン。

    使用済み燃料中のプルトニウムの含有率は1%弱。 800トンの燃料に含まれるプルトニウムの量は、8トン弱

    政府は、年間約5トン弱との数字を使っているが、「プルトニウム量は核分裂性プルトニウム量」と断ってあるとおり、プルトニウム239、プルトニウム241などの核分裂性プルトニウムだけを計算した量。

    原子力委員会長期計画策定会議第二分科会報告書『エネルギーとしての原子力利用』 第二分科会報告書 平成12年6月5日 38/48 (pdf)資料自体のページでは、35ページ

    「国内再処理工場においては、六ヶ所再処理工場が本格操業した段階で年間約5トン 弱のプルトニウムを回収することが予定されています。」

    5トン弱の核分裂性プルトニウムは、全量でいうと8トンだとの説明は、新計画策定会議(第3回)資料第3号 核燃料サイクルの主要要素に係る基礎資料(pdf)の再処理(国内3/4)─下記引用部分─を参照

    再処理(国内3/4)

    <事業の概要(その2)>

    ○日本原燃(株)が青森県六ヶ所村に、2006年7月の竣工を目指して、我が国初の商業用再処理工場(最大処理能力800t−U/年)を建設中。

    • 2004年5月末現在の建設工事進捗率は約95%。
    • 2002年11月から化学試験を開始し、主要建屋については2003年12月までに化学試験を終了し、今後、ウラン試験(※1)や使用済燃料を用いた総合試験(アクティブ試験)(※2)を実施する予定。
    • 工場内の使用済燃料貯蔵施設の最大貯蔵能力は3,000t−U(現時点で約943t−Uが搬入済)。
    • 回収される核分裂性プルトニウムは年間約5トン弱(※3)
    • この工場を約40年間操業して約3万2千t−Uの使用済燃料を再処理すると、約4万本の高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)と約5万m3のTRU廃棄物が発生すると試算。
    • また、この工場の解体により約4万5千m3のTRU廃棄物が発生すると試算。
    • ※1 ウラン試験・・・・使用済燃料の代わりに、放射能の低いウランを模擬燃料として用いることにより、再処理工場の機能・性能の確認等を行う試験。
    • ※2 アクティブ試験・・実際に使用済燃料を用いて運転試験を行い,再処理工場の性能が設計どおりであることを確認する試験。
    • ※3 非核分裂性プルトニウムを合わせた回収されるプルトニウムは約8トン


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    有意量

     これだけ行方不明になったら、核兵器一発が作られているかもしれないと考えるようにと国際原子力機関(IAEA)が定めている量。
     プルトニウム 8kg    核分裂性のプルトニウムだけの量ではなくプルトニウムの総量。
     高濃縮ウラン 25kg    高濃縮ウランの定義は、ウラン235の含有率が20%以上のもの。有意量は、ウラン235の量だけを計算したもの。実際の核兵器は、ウラン235の含有率が90以上のものを使うが、あらゆるレベルの高濃縮ウランで核兵器が製造できるとされている。

     なお、25kgというのは、 長崎型の構造 でプルトニウムの代わりに高濃縮ウランを使った場合の量。


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    日本の分離済みプルトニウム保有量 2003年末現在

    (2004年9月21日発表)
     英国  13.6トン
     フランス 21.6トン
     日本国内  5.5トン
     合計 40.7トン
  • 我が国のプルトニウムの管理状況(pdf)



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    世界の核兵器の材料となりうる物質の量

  • (ISIS:Bulletin of the Atomic Scientists 2004年11/12月)(pdf)
  • ISISによると分離済み民生用プルトニウムは2003年末現在で235トンに達している。2002年の数字は、231.3トン。この中で非核保有として目立つのは、ドイツの25.6トンと日本の38.6トン(ともに2002年末の数字)。

    プルトニウム
     民生用
      使用済み燃料 1370トン(毎年70−75トン増加)
      分離済み(2002年末現在) 231.3トン (日本38.6トン)
        2003年末推定  235トン   (日本40.7トン)
      毎年15−20トン分離
     軍事用
      155トン(プラスマイナス31トン)
     余剰と宣言された軍事用(つまり民生用)
      107トン
    高濃縮ウラン
     民生用  50トン
     軍事用 1425トン(プラスマイナス362トン)
     余剰と宣言された軍事用(つまり民生用)    423トン
     *これに少量の印パ・イスラエル・南アフリカのものが加わる


    民生用原子炉からの分離プルトニウム(2002年末)


    単位:トン
    イギリス
    70.8
    フランス
    47.9
    日本
    38.6
    ロシア
    37.8
    ドイツ
    25.6
    イタリア
    2.4
    オランダ
    2.1
    スイス
    2.0
    ベルギー
    1.8
    インド
    1.0
    スウェーデン
    0.8
    スペイン
    0.5
    合計
    231.3

  • さらに詳しくはGlobal Fissile Material Inventories


  • 軍事用及び余剰核分裂性物質(2003年末)

    (単位:トン)軍事用
    プルトニウム
    余剰
    プルトニウム
    軍事用
    高濃縮ウラン
    余剰
    高濃縮ウラン
    イギリス3.2±0.15?4.421.9±?-
    中国4.8±2-20±5-
    フランス5±1.5-30±7-
    ロシア95±2550773±300300
    米国47±252.5580±50123
    合計(四捨五入)155±311071,425±362423


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