核情報

2010. 4.15

新戦略兵器削減条約(START)抜粋

新戦略兵器削減条約(START)(英文:17ページ pdf)抜粋訳(と注釈)

*議定書(英文:165ページ pdf)、上院への送付文書類(英文)はこちら

前文

・・・

戦略攻撃兵器と戦略防衛兵器との相互関係の存在、戦略核兵器が削減されるに従い、この相互関係がさらに重要になること、そして、現在の戦略防衛兵器は両当事国の戦略攻撃兵器の有用性及び有効性を犯さないことを認識し、

通常弾頭のICBM及びSLBMが戦略的安定性に与える影響について留意し

・・・

第2条

  1. 各当事国は、そのICBM及びICBM発射装置、SLBM及びSLBM発射装置、重爆撃機、ICBM弾頭、SLBM弾頭、重爆撃用核兵器を削減・制限し、本条約の発効から7年後及びその後、その総数が、本条約第3条に従って数えた場合に、以下を超えないようにする。
    (a) 配備ICBM、配備SLBM、及び、配備重爆撃機 700
    (b) 配備ICBM搭載の弾頭、配備SLBM搭載の弾頭、配備重爆撃機用に数えられた核弾頭 1550
    (c) 配備及び非配備ICMB 発射装置、配備及び非配備SLBM発射装置、及び、配備及び非配備重爆撃 800
  2. 各当事国はその戦略的核兵器の構成・構造を自国で決定する権利を持つものとする。

第3条

  1. 本条約第2条1(a)に定められた総数限度に関して数える上では、
    (a) 各配備ICBMは、1と数える。
    (b) 各配備SLBMは、1と数える。
    (c) 各配備重爆撃機は、1と数える。
  2. 本条約第2条1(b)に定められた総数限度に関して数える上では、
    (a) ICMB及びSLMBに関しては、弾頭数は、配備ICBM上及び配備SLBM上に搭載された再突入体の数とする。
    (b) 重爆撃機1機について核弾頭1と数える。(注)
  3. 本条約第2条1(c)に定められた総数限度に関して数える上では、
    (a) 配備ICBM発射装置は、それぞれ、1と数える。
    (b) 非配備ICBM発射装置は、それぞれ、1と数える。
    (c) 配備SLBM発射装置は、それぞれ、1と数える。
    (d) 非配備SLBM発射装置は、それぞれ、1と数える。
    (e) 配備重爆撃機は、それぞれ、1と数える。
    (f) 非配備重爆撃機は、それぞれ、1と数える。

核情報注

この核搭載可能爆撃機は各1発搭載と計算する新ルール(実際は1機に6-20発搭載可)の計算方式を使うと、2010年初頭現在の米ロの戦略核は、それぞれ次のように減ると米国科学者連合(FAS)のハンス・クリステンセンが指摘している。

 米国 2100=>1650       ロシア 2600=>1740

2010年「核態勢の見直し」(21ページ)は次のように述べている。

新STARTの下では、[核及び通常兵器の]両能力の爆撃機は、戦略運搬手段及び1個の核弾頭として数えられる。この計算方法が採用されたのは、重爆撃機は、どちらの側に対しても[報復能力を破壊してしまう]第一撃の脅威を意味せず、また、日常的には、核兵器を搭載している爆撃機はほとんどあるいは全くないことを考慮してのことである。

参考

戦略攻撃兵器削減(SORT)の数え方

  • パウェル国務長官(当時)がブッシュ大統領に公式に条約を提出した際の書簡の説明
  • 削減要件:

    米国は、その実戦配備戦略核弾頭を1700ー2200に削減するに当たっては、発射装置内のミサイルから、そして、重爆撃機基地から弾頭を撤去することにより、また、幾つかのミサイル、発射装置、爆撃機を実戦配備から外すことによってこれを達成する意向である。

    本条約の適用上、米国は、実戦配備(operationally deployed)核弾頭とは、発射装置内にある大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載された再突入体、潜水艦上の発射装置内にある潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に搭載された再突入体、及び、重爆撃機に搭載されているか、もしくは、重爆撃機基地の兵器貯蔵地域に貯蔵された核兵器を指すと見なす。重爆撃機基地には、この他、少数の戦略核弾頭スペア(ICBM弾頭のスペアも含む)が置かれている。米国は、これらの予備を実戦配備の戦略核弾頭とは見なさない。・・・

  • 議会への提出文書 条項ごとの説明
  • 一部の核弾頭──例えば、点検整備中の潜水艦、あるいは、他の目的用に改修された潜水艦に名目上割り当てられているもの、ICBMやSLBMから下ろされた(ダウンロードされた)もの、及び、不活性化されたICBM「ピースキーパー」は、これらのICBMやSLBMが、START条約の規定に従い廃棄されるか、転換されない限り、START条約の対象となり続ける。しかし、同時に、モスクワ条約の下では、これらの核弾頭は、実戦配備の状態でなくなれば、米国の削減の中に入れられる。(注)

    核情報注:ここで言うSTARTは1991年締結のSTARTTを指す。



第5条

3. 各当事国は、ICBM発射装置及びSLBM発射装置を、そこにミサイル防衛用迎撃ミサイルを設置するために使ってはならない。各当事国はさらに、ミサイル防衛用迎撃ミサイルの発射装置を、そこにICBM及びSLBMを設置するために使ってはならない。この規定は、本条約調印以前にミサイル防衛用の迎撃ミサイル設置のために転換されたICBM発射装置には適用されないものとする。


第9条

両当事国の相互合意により、ICBM及びSLBMの発射に関するテレメーター[自動計測電送装置]情報を同等の原則で交換するものとする。両当事国は、このようなテレメーター情報交換の量について合意するものとする。(注)

  • 核情報注: 議定書「パート7 テレメーター情報」に次のようある。
    1. 両当事国は、同数のICBM及びSLBMの発射に関するテレメーター情報を交換するものとする。ただし、ICBM及びSLBMの各暦年当たりの発射5回分を超えないものとする。

第14条

  1. 本条約は、その不可欠の部分をなす議定書を含め、各当事国の憲法の定める手続きに従った批准の対象となる。本条約は、批准文書の交換の日に発効する。
  2. 本条約は、10年間有効とする。ただし、本条約の後の戦略攻撃兵器の削減及び制限に関する合意によって、それより先に、取って代わられた場合は別である。どちらか一方の当事国が本条約の延長について提起した場合は、両当事国は、同件を合同で検討する。両当事国が本条約の延長を決めた場合には、条約は、最高5年間延長される。ただし、本条約が、その後の取り決めによって、それより先に取って代わられた場合は別とする。
  3. 各当事国は、本条約の主題に関する特別の状況がその至高の国益を脅かしたと判断した場合には、本条約から脱退する権利を有する。その当事国は、もう一方の当事国に対しその決定について通告するものとする。このような通告は、通告側の当事国がその至高の国益を脅かしたと見なす特別な状況に関するステートメントを含むものとする。本条約は、上記通告を他の当事国が受領した日から3ヶ月後に失効するものとする。ただし、上記通告が、これより遅い期日を指定した場合は別とする。
  4.  発効の日から、本条約は2002年5月24日「戦略攻撃兵器削減に関するアメリカ合衆国とロシア連邦の間の条約」に取って代わり、後者は、その日に失効するものとする。

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