核情報

2004.3.30

ミサイル防衛システムの配備延期を訴える49人の退役将官の書簡

元統合参謀本部議長(1985ッ89年)のウイリアム・クロー大将を含む49人の退役将官グループが、3月26日、大統領に陸上配備の弾道ミサイル防衛(GMD)の配備延期を訴える大統領宛公開書簡を発表しました。
GMDは、2002年の大統領の命令に従って今年9月までに配備が開始されることになっているものです。計画では、2004年にアラスカ州フォート・グリーリーに6基、カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地に4基を、2005年にさらに10基をフォート・グリーリーに配備するということになっています。以下に書簡の粗訳と署名者のリストを載せておきます。

2004年3月26日

大統領閣下

2002年12月、大統領は、「陸上配備戦略ミッドコース弾道ミサイル防衛(GMD)」能力の配備を命じられましたッッ2004年9月末までに運用開始になるよう予定されているものです(日本語訳)。そして、その目的は、大量破壊兵器を搭載した単一のあるいは限定的な数の弾道ミサイルで我が国を攻撃しようとする「ならず者国家」に対して我が国を防衛することだと説明されました。

この配備のデッドラインに間に合わせるため、ペンタゴンは、この非常に複雑な複数のシステムからなるシステムが効果的で適切であるか否かを判断するのに欠かすことのできない運用実験の要件の適用を省いています。国防省運用実験・評価ディレクターは、2004年3月11日に、運用実験は、「予見できる将来」には、計画されていないと述べています(pdf)。さらに、米国「連邦会計監査院(GAO)」は、最近出した報告書(pdf)において、GMDシステム構成要素に使われている10の決定的重要なテクノロジーのうち、適切な開発試験によって機能すると検証されたのは、二つだけだと指摘しています。

考慮すべきもう一つ重要な点は、ミサイル防衛の高いコストと、他の国家安全保障プログラムに割り当てられている資金との間のバランスです。1983年3月のレーガン大統領の「戦略防衛イニシアチブ(SDI)」のスピーチ以来、控えめに見ても、1300億ドル(インフレ調整前)が、ミサイル防衛に投入されたと見積もられています。その多くがGMD用です。大統領のミサイル防衛用の2005会計年度予算(pdfCDI解説)は、102億ドルで、そのうち37億ドルがGMDに割り当てられています。向こう5年間で、ミサイル防衛用に、約530億ドルが、計画されており、そして、続いてもっとずっと多くが使われることになっています。適切な実験をする前に、非常に複雑な兵器システムを配備することは、コストを相当に増大させる可能性があります。

すでに配備されている米国のテクノロジーを使えば、弾道ミサイルの発射源をピンポイント的に特定することができます。従って、どんな国であれ、大量破壊兵器を搭載したミサイルで米国を攻撃したり、テロリストに自国の領土からそのような攻撃をすることを許したりすることによって、米国の圧倒的な報復攻撃で壊滅させられるリスクを犯すということは、極めてありそうにない。

大統領が言われた通り、われわれの最高の優先順位は、テロリストが大量破壊兵器を取得・利用することを防ぐことにあります。私たちも同感です。従って、軍事的に責任のある行動のコースとして、大統領が、この高価で、実験をしていないGMDシステムの作戦配備を延期され、その代わりに、核兵器・物質を置いている多くの施設を守り、米国に大量破壊兵器を持ち込もうとする恐れのあるテロリストに対して、我が国の港や国境を守るためのプログラムに関連資金を移すことを提案します。

署名者:

Admiral William J. Crowe (USN, ret.)
General Alfred G. Hansen (USAF, ret.)
General Joseph P. Hoar (USMC, ret.)

Lt. General Henry E. Emerson (USA, ret.)
Lt. General Robert G. Gard, Jr. (USA, ret.)
Vice Admiral Carl T. Hanson (USN, ret.)
Lt. General James F. Hollingsworth (USA, ret.)
Lt. General Arlen D. Jameson (USAF, ret.)
Lt. General Robert E. Kelley, (USAF, ret.)
Lt. General John A. Kjellstrom (USA, ret.)
Lt. General Dennis P. McAuliffe (USA, ret.)
Lt. General Charles P. Otstott (USA, ret.)
Lt. General Thomas M. Rienzi (USA, ret.)
Vice Admiral John J. Shanahan (USN, ret.)
Lt. General Dewitt C. Smith, Jr.(USA, ret.)
Lt. General Horace G. Taylor (USA, ret.)
Lt. General James M. Thompson (USA, ret.)
Lt. General Alexander M. Weyand (USA. Ret.)

Major General Robert H. Appleby (AUS, ret.)
Major General James G. Boatner (USA, ret.)
Major General Jack O. Bradshaw (USA, ret.)
Major General Morris J. Brady (USA, ret.)
Major General William F. Burns (USA, ret.)
Rear Admiral William D. Center (USN, ret.)
Major General Albert B. Crawford (USA, ret.)
Major General Maurice O. Edmonds (USA, ret.)
Rear Admiral Robert C. Elliott, (USN, ret.)
Major General John C. Faith (USA, ret.)
Rear Admiral Robert H. Gormley (USN, ret.)
Major General Richard B. Griffitts (USA, ret.)
Major Rear Admiral Charles D. Grojean (USN, ret.)
Major General Raymond E. Haddock (USA, ret.)
Major General Jack R. Holbein, Jr. (USAF, ret.)
Major General Stanley H. Hyman (USA, ret.)
Major General Wayne P. Jackson (USA, ret.)
Major General Frederick H. Lawson (AUS, ret.)
Major General Vincent P. Luchsinger, Jr. (USAF, ret.)
Major General James J. LeCleir (AUS, ret.)
Major General William F. Willoughby (USAF, ret.)

Brig. General George C. Cannon, Jr. (USAF, ret.)
Brig. General John J. Costa (USA, ret.)
Brig. General Alvin E. Cowan (USA, ret.)
Brig. General Lee Denson (USAF, ret.)
Brig. General Evelyn P. Foote (USA, ret.)
Brig. General Leslie R. Forney, Jr. (USA, ret.)
Brig. General John H. Grubbs (USA, ret.)
Brig. General James E. Hastings (USA, ret.)
Brig. General John H. Johns (USA, ret.)
Brig. General Maurice D. Roush (USA, ret.)


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