六ヶ所再処理工場の使用済み燃料使用試験(アクティブ試験)
延期を求める意見書青森県の六ヶ所再処理工場が年末にも原子力発電所の実際の使用済み燃料を使った試験(アクティブ試験)を開始しようとしている。「試験」という名だが、2007年5月の操業開始までに約4トンものプルトニウム(長崎型原爆500発分以上)を取り出す計画である。核拡散防止の観点から再処理モラトリアムの必要性が国際的に議論されている時に、このような「試験」を強行することは、核廃絶を目指す日本の政策に疑問を持たせることになる。
アナン国連事務総長は、今年5月に開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議の初日の演説で次のように述べている。「[ウラン濃縮と再処理という]燃料サイクルのもっとも機微な部分を何十もの国が開発し、短期間で核兵器を作るテクノロジーを持ってしまえば、核不拡散体制は維持することができなくなる。そして、もちろん、一つの国がそのような道を進めば、他の国も、自分たちも同じことをしなければと考えてしまう。そうなればあらゆるリスク──核事故、核の違法取り引き、テロリストによる使用、そして、国家自体による使用のリスク──が高まることになる。」
世界で今運転を開始しようとしている再処理工場は六ヶ所工場だけである。年間8トンものプルトニウム(長崎型原爆1000発分以上)を取り出す予定のこの工場は、運転開始となれば、非核保有国として初めての商業規模のものとなる。
このため、NPT再検討会議の期間中に、六ヶ所再処理工場運転開始の無期限延期を求める二つの要請書が発表された。日本を含む世界の学識経験者や平和団体の代表ら約200名が署名したこれらの文書は、「六ヶ所工場は、核兵器を持っていない国における最初の工業規模再処理工場であるから、その計画通りの運転は、また、他の国々−−イランや北朝鮮を含む−−が再処理施設や濃縮施設を作るのを思いとどまらせるためになされている国際的努力の弊害となる」と指摘している。
プルトニウムを利用しながら増やすという高速増殖炉計画はもんじゅの事故などで頓挫し、その後出されたプルサーマル計画(プルトニウムを普通の原発で消費するもの)も、データ捏造や原発トラブル隠し、事故などの影響で進んでいない。そもそもプルサーマルは普通のウラン燃料を使った原子炉の運転よりコストが非常に高くつく。原発推進国の多くが再処理をしないで使用済み燃料をそのまま地層処分することに決めている事実がプルトニウム利用の非経済性を物語っている。(最終処分する場所が決まっていないというのは、使用済み燃料の直接処分の場合も、再処理で出てくる高レベル廃棄物その他の廃棄物の場合も同様である。)
日本はすでに約43トン(長崎型5000発分以上)ものプルトニウムを保有している。利用のめども立たないまま、さらにプルトニウムを作れば、不必要に核拡散の危険を増大させるものとの国際的批判は免れない。
以上のことから、六ヶ所再処理工場のアクティブ試験を延期し、その間に、再処理計画が核廃絶に与える影響についての議論を深めるように求める。
以上、地方自治法99条の規定に基づき意見書を提出する。
**議会議長
提出先 内閣総理大臣、経済産業省大臣