あれは核兵器用だったと珍説を披露する元原子力委委員長
下に掲載するのは、反原発新聞2025年7月号の『反原発講座』に掲載された拙稿である。
英国がゴミとして処分すると決めた民生用プルトニウムについて、あれは元々核兵器用だったという根本的に間違った主張を、原子力問題の「権威」のはずの近藤駿介元原子力委員会委員長が、6月3日の国会の委員会で展開した。この主張が間違っているという指摘がないまま同委員会は終了した。また、主張がいかに間違っているかを論じた報道もないようだ。ここにこの記事を再掲するのは、国会における近藤元委員長の誤った主張のために、日本の再処理政策に関する議論が捻じ曲げられることのないよう願ってのことである。
ゴミ処分決定の英プルトニウム──あれは兵器用と元原子力委委員長
初出 反原発新聞568号(2025年7月)
*小見出しなど一部加筆修正
今年1月に英国がゴミとして埋設処分すると発表したプルトニウム約120トンについて、近藤駿介元原子力委員会委員長が、6月3日の衆議院原子力問題調査特別委員会で、あれは元々核兵器用のものであり、日本の再処理政策とは関係ないと主張した。実際は、民生用だ。高速増殖炉用に使うプルトニウムを得るために開始した民生用再処理を、増殖炉の開発を放棄した後も続けた結果溜まったものだ。
核兵器用生産1995年終了──民生用はこの後も継続
英国は1995年に、核兵器用プルトニウムの生産中止を発表した(保有量は約3トン)。民生用については、1998年に国際原子力機関(IAEA)に送った文書で、前年末現在約54トンと発表している。それが今では、約2倍に達してしまったということだ。当時の方針は、将来の燃料用に貯蔵というものだった。だが、英国は、1994年に高速増殖炉開発を中止していた。このため1998年に、英国政府の諮問機関的役割を担う「王立協会」が、民生用プルトニウムを他の物質内に固定化し埋設処分することも検討すべきだと提言した。この論争に終止符を打ったのがゴミ処分するとの今回の結論だ。無期限貯蔵と原子炉での消費という他の二つの選択肢は退けられた。
軍民両用再処理工場と東海第一原発の使用済み燃料
最近まで稼働していた二つの再処理工場のうち、古い方の工場(B205)は、英国の第一世代のガス冷却発電炉から出てくる金属ウラン燃料を再処理するために1964年に運転が開始された。これらのガス冷却炉は、元々は、軍民両用炉として開発されたものだ。水中で腐食しやすいマグノックス合金の燃料被覆を使用しており、照射済み燃料はプールに短期間保管した後再処理するとの想定だった。
兵器用の運転の際は、燃料を燃やす期間を短くしていた。燃焼期間が長い方が発電炉として経済性が高まるが、プルトニウムの組成が核兵器には理想的でなくなる。軍事用プルトニウム生産を中止した1995年以後も、使用済み燃料の貯蔵方法の変更などを検討せず、再処理が続けられ、2022年の運転終了までに生産された民生用プルトニウムは約84トンに達した。これには同型の東海第一原発からの約3.3トンも含まれる。
英の再処理を支えた日本──THORPの建設支援
一方、高速増殖炉計画が放棄された1994年に運転開始の再処理施設ソープ(THORP:酸化物燃料再処理工場)の目的は、増殖炉の初期装荷燃料用のプルトニウムが必要だとする日欧諸国に再処理サービスを提供することだった。最初の10年間の「基礎契約」の3分の2が日本を主とする海外顧客用(日本分が全体の約40%)で、残りは英国第二世代の「改良型ガス冷却炉(AGR)」用だった。同型炉の使用済み燃料は水中での長期保管が可能で、再処理の必要はなかった。プルトニウムの利用のあてもないのに英国政府がこの燃料の再処理を義務付けたのは、THORPの採算性を確保するためだった。同工場の2018年の終了までの生産量は約56トンに達した。
英国に置き去りの22トン
英国保有117トンの他に、英国での再処理で分離された外国籍の22.5トンが英国で保管されている。そのほとんどが日本分の約22トンだ。これが英国に置き去り状態にある。英国にはMOX製造工場がないためだ。
英国は2011年に、商業的条件が合えば、「他国のプルトニウムの所有を英国に移し、英国所有のものと一緒に処分してもいい」と提案している。これまで10トン以上の外国籍のプルトニウムが英国籍に移されている。これには「ゴミ処分決定」後の2月26日に発表されたイタリア分の1.58トンの移譲も含まれる。
再処理政策破綻の象徴の22トン問題。日本は22トンの「ゴミ処分」を英国に委託するのか。その場合、英国の高速増殖炉計画放棄決定前年の1993年に建設の始まった六ヶ所再処理工場の運転開始計画をどうするのか。英国の経験を教訓に国民的議論が必要だ。
参考資料
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ゴミ処分決定の英プルトニウムについての誤解
あれは核兵器用だったと近藤駿介元原子力委員会委員長 核情報 2025. 6.26
*2025年6月11日院内集会「原発・核燃サイクルの中止を求めて」(脱原発政策実現全国ネットワーク主催)での発表(パワポ資料と動画)、及び、近藤元原子力委員会委員長の問題の発言のURLを紹介。 -
プルトニウムはゴミ──「再処理大国」英国の結論 核情報 2025.04.02