第35回原子力委員会定例会議(9月5日)に提出された資料 (pdf)によると2007年度原子力関係経費概算要求額(速報値)は、4831億5500万円で、今年度予算と比べ9.4%という大きな伸びを示しています。これは、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)電気事業分科会の原子力部会が8月に正式にまとめた『原子力立国計画』の考えを反映したものといえます。要求は、また、『計画』に従い、再処理・高速増殖炉を推進する内容となっています。
高速増殖炉関係では、文部科学省が400億円(30億増額)、経済産業省が40億円(新規)を要求しています。経産省の40億円は、「高速増殖炉(FBR)サイクル実用化戦略調査研究フェーズ II」が今年3月に終わり、実用化に向けた「研究開発」段階に入るということで要求されたものです。実証炉の2025年頃までの実現、商業炉の2050年よりも前の操業開始という『原子力立国計画』の「夢」に沿った予算です。文科省の実用化研究開発用要求額は95億円です。この合計135億円の要求には、第2再処理工場関連の技術開発も含まれます。1995年にナトリウム漏れ火災事故を起こして現在改造工事中の高速増殖原型炉「もんじゅ」(文部省要求179億円)や高速実験炉「常陽」(同38億円)の予算はこれとは別です。
以下、経産・文科両省の概算要求の内容を両省の資料から抜粋してまとめました。
(同じ経産省の文書でも、項目によっては記載場所が異なっているなど、細かい点では比較が難しくなっています。)
- 2007年度原子力関係経費概算要求額
- 経済産業省・文部科学省の原子力関連概算要求要約
- 高速増殖炉(FBR)サイクル関連予算
- 経産省原子力関連予算要約1(簡略版)
- 経産省原子力関連予算要約2(詳細版)
- ウラン資源確保関連資料
参考:
・各省庁合計
・経産省
- 平成19年度資源エネルギー関係概算要求について (pdf)
- 平成19年度資源エネルギー関係概算要求の概要 (pdf)
- 2007年度「原子力立国計画」関連予算要求の概要 (pdf)
- 平成19年度原子力安全・保安院関係予算要求の概要 (pdf)
- 原子力分野の人材育成について (pdf)
・文部科学省
・経済産業・文部科学両省
▲ページ先頭へ戻る2007年度原子力関係経費概算要求額
単位:100万円
2007年度 概算要求 | 2006年度 予算 | 対前年度増 | 対前年比 | |
---|---|---|---|---|
文部科学省 | 285,481 | 267,471 | 18,010 | 106.7% |
経済産業省 | 185,713 | 163,141 | 22,572 | 113.8% |
その他 | 11,961 | 10,947 | 1,014 | 109.3% |
合計 | 483,155 | 441,559 | 41,595 | 109.4% |
平成19年度原子力関係経費概算要求額総表(速報値)(31KB) (pdf)より
▲ページ先頭へ戻る経済産業省・文部科学省の原子力関連概算要求要約
(括弧内は2006年度予算額)
経済産業省 | 1900億円 | (1677億円) |
---|---|---|
文部科学省 | 2855億円 | (2675億円) |
合計 | 4755億円 | (4374億円) |
*上は両省のサイトに出された文書の数字
▲ページ先頭へ戻る高速増殖炉(FBR)サイクル関連予算
括弧内は2006年度予算
文部科学省 | 401億円 | (368億円)(※), (※2) |
---|---|---|
経済産業省 | 40億円 | ( 新規) |
◎内訳
- 「高速増殖炉サイクル実用化研究開発」の創設
135億円(26億円)(※),(※2)(文部科学省、経済産業省)
文部科学省 95億円(26億円)
経済産業省 40億円(新規) - 高速増殖原型炉「もんじゅ」
179億円(220億円)(※)(文部科学省) - 高速実験炉「常陽」
38億円( 29億円)(※)(文部科学省) - MOX 燃料製造技術開発
49億円( 46億円)(※)(文部科学省)
*常陽・もんじゅ用 - 原子力システム研究開発
55億円( 63億円)(文部科学省)
- (※)日本原子力研究開発機構の運営費交付金中の推計額。
- (※2)原子力システム研究開発については、競争的資金であるため、推計額を計上。
平成19年度概算要求による高速増殖炉(FBR)サイクル関連予算について (pdf)より要約抜粋
▲ページ先頭へ戻る経産省原子力関連予算要約1(簡略版)
(単位:億円 括弧内は2006年度)
原子力立国計画【1900(1677)】
- 1)高速増殖炉サイクル、核燃料サイクル等の技術開発、ウラン資源確保、人材育成等【173(134)】
- 2)原子力安全・防災・核物質防護対策の確実な推進【337(336)】
(*原子力安全・保安院の原子力安全部門用) - 3)原子力発電施設等と地域との共生の実現【1383(1197)】
説明
原子力立国計画【1900(1677)】
2030年以降においても、発電電力量に占める原子力発電の比率を30〜40%程度以上とすることを目指し、次世代軽水炉開発や人材育成、ウラン資源自主開発の推進の強化等を行うとともに、高速増殖炉サイクルの早期実用化への円滑な移行に向けた研究開発側と導入側の一体的取組、核燃料サイクルの着実な推進に向けた個別立地対策、広聴・広報活動や関連産業の強化、放射性廃棄物対策等を推進する。耐震安全性の確保など、原子力の安全に関する取組を進める。
- 1)高速増殖炉サイクル、核燃料サイクル等の技術開発、ウラン資源確保、人材育成等【173(134)】
高速増殖炉サイクルの実証・実用化に向けた技術開発、大学・大学院等における人材育成支援、海外ウラン探鉱支援事業を新規に開始する。また、次世代軽水炉開発プロジェクト、現場技能者の育成・技能継承、核燃料サイクルに係る技術開発に引き続き取り組むとともに、放射性廃棄物対策の研究開発を強化する。国際面では、アジア諸国の原子力発電導入に向けた支援を拡充する。 - 2)原子力安全・防災・核物質防護対策の確実な推進【337(336)
原子力施設の高経年化対策など原子力安全対策を強化するとともに、広聴・広報活動を通じ、国民に対する説明責任を果たす。また、原子力防災・核物質防護対策を的確に行う。 - 3)原子力発電施設等と地域との共生の実現【1383(1197)】
原子力発電所、核燃料サイクル施設の立地を積極的に推進するため、立地地域の自主的・自立的な発展に資する支援を強化するとともに、高レベル放射性廃棄物の最終処分候補地の選定を促進するための支援も強化する。また、情報の受け手に応じたきめの細かい広聴・広報活動の効果的・効率的な実施を図る
資料6−1: 平成19年度資源エネルギー関係概算要求について (pdf)より抜粋
▲ページ先頭へ戻る経産省原子力関連予算要約2(詳細版)
原子力立国計画【1900(1677)】
2030年以降においても、発電電力量に占める原子力発電の比率を30〜40%程度以上とすることを目指し、次世代軽水炉開発や人材育成、ウラン資源自主開発の推進の強化等を行うとともに、高速増殖炉サイクルの早期実用化への円滑な移行に向けた研究開発側と導入側の一体的取組、核燃料サイクルの着実な推進に向けた個別立地対策、広聴・広報活動や関連産業の強化、放射性廃棄物対策等を推進する。
また、耐震安全性の確保など、原子力の安全に関する取組を進める。
●高速増殖炉(FBR)サイクル、核燃料サイクル等の技術開発、ウラン資源確保、人材育成等
- FBRサイクル技術の実証・実用化に向けた技術開発【40(新規)】
FBR実証炉及び関連サイクル実証施設の早期実現を図るため、文部科学省と連携し、「高速増殖炉サイクル実用化研究開発」を推進する。具体的には、実証施設の概念検討を開始するとともに、実証炉の設計・建設段階で必要となる材料の規格・基準整備、プラントの保守・補修技術等の実プラント技術の開発に着手する。また、次世代再処理技術と調和可能な回収ウラン転換前高除染プロセスの開発等を実施する。 - 海外ウラン探鉱支援事業【13(新規)】
世界の天然ウラン供給量拡大に貢献し、また我が国のウラン資源安定供給を確保するため、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じ、我が国民間事業者による海外ウラン探鉱事業を支援する。 - 原子力人材育成プログラムの創設【3(新規)】
今後とも原子力分野において、産業界で活躍しうる優秀な人材を確保していくため、文部科学省と連携して、「原子力人材育成プログラム」を構築し、原子力を支える基盤的技術分野まで含め、産業現場でのインターンシップや産業界のニーズを踏まえたカリキュラム構築等、大学・大学院等における人材育成・研究活動の充実・強化に向けた取組を支援する。 - 官民一体での次世代軽水炉開発プロジェクトの実施【1(1)】
2030年前後から見込まれる国内既設原子力発電所の大規模な代替需要に備え、世界市場も視野に入れつつ、高い安全性・経済性等を有する次世代軽水炉開発のためのフィージビリティ調査を実施する。 - 核燃料サイクルの推進(一部再掲)【57(69)】
我が国における核燃料サイクルの確立に向け、軽水炉の全炉心MOX利用技術開発を行うとともに、MOX燃料加工技術の確証試験及びウラン濃縮に係る新型遠心分離機の開発を推進する。また、次世代再処理技術と調和可能な回収ウランの転換前高除染プロセス開発等を実施する。 - 原子力発電所等のメンテナンス現場人材の育成【1(1)】
原子力発電所等の安全・安定的な運転を維持するためには、メンテナンスの現場を担う人材の育成や技能の継承を図っていくことが重要。こうした観点から、メンテナンス人材について、地域のニーズや多様性を踏まえつつ、個別企業の枠を超えた現場人材育成への先進的取組に対し支援を行う。 - 放射性廃棄物対策の着実な推進【51(43)】
核燃料サイクル事業の進展に伴って発生する放射性廃棄物を安全かつ的確に処理・処分するため、高レベル放射性廃棄物や再処理施設等から発生する長半減期低発熱放射性廃棄物等の処分技術に係る研究開発を強化する。 - アジア地域における原子力発電導入への支援【1(1)】
今後原子力発電を導入しようとするアジア諸国における核不拡散・原子力安全等のための各種制度整備に対して、我が国の有する知見・ノウハウの提供等の支援を行うことは、当該国のみならず、我が国を含めたアジア諸国の原子力の平和・安全利用を図る上で重要。このため、これまでのベトナム・インドネシアに加え、新たにカザフスタンへの支援を行う。
●原子力安全・防災・核物質防護対策の確実な推進
- 原子力施設の高経年化対策の抜本的強化【14(8)】
発電所立地地域に存在する大学、研究機関を中心とした産学官連携の下、機器・構築物の経年劣化の発生・進展状況等の情報を収集するとともに、経年劣化メカニズムを解明することなどにより原子力施設の高経年化対策を抜本的に強化する。 - 我が国初の本格的な検査官訓練設備の整備【14(14)】
現場での安全規制を担う国の原子力保安検査官等の更なる資質向上を図るため、我が国で初めて実践的な訓練設備を本格的に整備する。 - 原子力防災・核物質防護対策の推進【82(76)】
原子力防災対策に万全を期すため、防災資機材整備等への支援や、情報通信設備の高度化を進めた「統合原子力防災ネットワーク」(仮称)の構築を図る等防災基盤を強化する。また、テロの脅威等に対応するため、核物質防護対策の充実・強化に取り組む。 - 国際協力の推進【3(3)】
原子力発電の導入・拡大の動きが活発なアジア地域における原子力安全を確保するため、原子力発電安全運転管理等に関する研修等を実施する。 - 高レベル放射性廃棄物等の安全規制制度の整備【13(13)】
高レベル放射性廃棄物等の地層処分のための安全評価手法、安全基準の整備に必要となる長期的評価手法や広域地下水流動の調査等を行う。併せて低レベル放射性廃棄物の余裕深度処分に向けた基準等の整備に必要となる調査を行う。 - 耐震安全性に係る安全研究等の推進【14(14)】
耐震指針の改訂にも対応し、耐震安全性の確率論的安全評価手法の向上、耐震安全性の研究に係る国内外の最新知見の収集・整備等にさらに取り組む。
●原子力発電施設等と地域との共生の実現
- 電源立地地域の振興【1344(1157)】
原子力発電所、核燃料サイクル施設の立地を積極的に推進するため、立地地域の自主的・自立的な発展に資する支援を強化するとともに、高レベル放射性廃棄物の最終処分候補地の選定を促進するため、文献調査段階の電源立地地域対策交付金の交付額を単年度あたり10億円(総額20億円)に拡充させる。 - 広聴・広報活動を始めとする国民理解への取り組み【39(40)】
情報の受け手に応じたきめの細かい広聴・広報活動を効果的かつ効率的に実施する。特に高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定や長半減期低発熱放射性廃棄物の処分事業に向けた広聴・広報活動を強化する。
資料6−2: 平成19年度資源エネルギー関係概算要求の概要 (pdf)より
さらに詳しくは:
▲ページ先頭へ戻るウラン資源確保関連資料
- 小泉総理の中央アジア出張について(原子力関係)原子力委員会への提出資料 (pdf)
- 中央アジアにおけるウラン開発等の原子力協力について 資源エネルギー庁 (pdf)
- 小泉総理のカザフスタン、ウズベキスタン訪問 外務省
- 日・カザフ、原子力協定締結へ合意-首脳会談で ウラン資源・再転換など協力関係を構築 電気新聞 8月30日付