核情報

2010. 4

ACT: 新STARTの次の措置


米国ACT誌巻頭コラム

新STARTの次の措置(原文)『アームズ・コントロール・トゥデー』2010年4月号

ダリル・キンボール

米ロの交渉者らは、バラク・オバマ大統領とドミトリー・メドベージェフ大統領の後押しを得て、この20年近くで最も重要な戦略核兵器削減条約を締結した。4月8日にプラハで署名されるこの新戦略兵器削減条約(START)は、ワシントンとモスクワを、未だに膨れあがったままの冷戦時代の核兵器の検証可能な削減、そして、他の重要な核セキュリティー優先事項における新たな協力への道に戻らせるものである。

条約は、それぞれの戦略的核運搬手段配備数を700、戦略弾頭配備数を1550以下に制限する。これは、現在の核弾頭上限より30%低いものである。同じく重要な点は、新STARTは、昨年失効した1991年のSTARTの検証体制に代えて、新条約の10年の期間中の遵守のモニタリングのためにもっと有効で最新のシステムを定めたことである。

新STARTは、戦略的安定性と予測可能性を復活させる。これは、米ロの軍縮行動の具体的な例となり、5月の再検討会議の際に核不拡散条約(NPT)を強化するための措置に対する支持を強化することになるだろう。

米ロの間の1年間に亘る激しい、浮き沈みを伴った交渉の末に条約が締結されたことは、オバマ・チームにとって重要な外交的成果である。しかし、新STARTは、大統領の世界的な「核兵器の数と役割」を低減するという目標に向けた第一歩に過ぎない。

新STARTでも、まだ米ロに何千発もの過剰な核兵器を残すことになる。これは、核拡散を防ぎ、テロリズムと闘う上で大きな重荷である。オバマとメドベージェフは、次の核兵器削減のための協議を再開する用意があると表明すべきである。ヒラリー・ロダム・クリントンが2009年1月に国務長官指名の公聴会で述べたように、このような交渉は、その範囲を拡大して、すべてのタイプの核弾頭の検証可能な処分を含むようにすべきである:すなわち、配備、非配備、戦略、非戦略核兵器を含むものである。

来るNPT会合における勢いを強化するために、オバマとメドベージェフは、世界の他の認定された核兵器国に対し、いかにして核能力をもっと透明にし、もっと大きな信頼を醸成し、最終的に全面的核廃絶に向けて進むかについての高いレベルでの対話をするよう呼びかけるべきである。

まず第一に、オバマ政権は、上院に対し年内に新条約を検討し、承認するよう働きかけるために、政府全体に亘る効果的な作業を開始しなければならない。上院での承認は、大統領の国内的方針に関する両党間の敵対のために、難しい課題となっている。

これに成功するためには、新STARTの米国にとっての安全保障上の圧倒的価値と、条約承認の遅れあるいは否定の持つ危険性が、明確にされなければならない。ホワイトハウスは、すでに、強力で目に見える支持を得ている。ロバート・ゲーツ国防長官、マイケル・マレン米統合参謀本部議長、さらには、ジョージ・シュルツ及びヘンリー・キッシンジャー元長官らを含む国家安全保障問題の共和党側重鎮らの支持である。また、外交委員会副委員長のリチャード・ルーガー上院議員(共和党・インディアナ州選出)は、委員会が「新条約の批准を早期に達成するための作業できるよう」協力すると述べている。

オバマ政権は、ジョン・カイル(アリゾナ州選出)をはじめとする他の共和党上院議員が米国のミサイル防衛計画に対する制限や新条約の検証可能性について挙げた懸念事項はすでに対処済みであることを明確にし続けなければならない。オバマは、イランの短・中距離ミサイル用の米国迎撃ミサイル配備計画の制限についての土壇場でのロシアの提案に抵抗した。新STARTは、米ロの戦略攻撃兵器のみを制限するものである。これまでの米ロの核兵器制限条約と同じく、新STARTは、拘束力のない前文において攻撃的兵器と防衛的兵器の関係について認めるだけになる。

2003年に2002年戦略攻撃兵器削減条約(モスクワ条約)の簡潔さを讃え、STARTとその検証規定を「米国の真の安全保障上に必要に役立たない」「700ページの巨大な怪物」と呼んだカイルは、今度は、STARTの検証手続きの一部が失われたことを嘆いている。実際は、新STARTは、その前身よりも迅速なデータ交換・通告を要求する効果的で透明な検証方法を特徴としている。今日の冷戦後の必要と直接関連のない高く付く手続きを改訂あるいは削除している。新STARTはまた、それぞれの戦略的運搬手段を同定し、実際の核弾頭配備レベルを高い信頼性をもって検証する新しい革新的技術を含むことになる。

オバマ政権が核兵器用インフラの近代化のためにその予算請求を10%増額しているにも関わらず、共和党上院議員らは、また、さらに大幅の予算増額と「近代的弾頭」の追求がなければ、検証可能な米ロ戦略兵器削減は軽率だと述べている。実際は、米国の核兵器研究所は、その進行中の「寿命延長計画」によりすべての主要核弾頭タイプの信頼性を維持するのに十分すぎるほどの資金を得ているのである。新しい設計の核弾頭と核実験の再開は、技術的に不要であり、米国の核不拡散努力の妨げになるだろう。

START後継条約についての批准措置を遅らせ、米ロの核競争を復活させることは、賢明ではなく、危険である。新STARTが、冷戦時代の過剰な戦略的核兵器をさらに減らすことによって米国及び世界の安全保障を高めることは間違いない。


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