核情報

2020. 6. 2

再処理工場からの年間トリチウム海洋放出量は福島全量の20倍と経産省──「フル稼働になるわけではない」ので管理目標値を下回ると規制委更田委員長

5月15日、衆議院経済産業委員会の質疑で経産省が六ヶ所再処理工場からのトリチウム年間推定海洋放出量は、1京8000兆ベクレルで、30年かけて放出という計画の福島総量(860兆ベクレル)の20倍に当たると答えました。これは、5月13日に原子力規制委員会が六ヶ所再処理工場に対する事実上の合格書である「審査書(案)」を了承したことに関連した質疑の中で出てきたもので、質問したのは宮川伸議員(立憲民主党)、答えたのは、経産省資源エネルギー庁村瀬佳史電力・ガス事業部長です。

一方、原子力規制委員会の更田豊志委員長は、「審査書(案)」を了承した5月13日の委員会後の記者会見で、六ヶ所再処理工場の管理目標値は非常に高いが、プルトニウムの蓄積量の制限等があるのでフル稼働になるわけではなく、管理目標値を下回る放出量になると答えています。

以下、これらの主張をどう評価すべきか検討してみましょう。

経産省が1年で福島全量の20倍と言っても記事にならない?

5月15日の経産省の答えは、次に見るように二重の意味で驚くべき証言ですが、マスコミでは少なくとも大きくは報じられていないようです。

一つは、福島全量の20倍を1年で放出という話そのものです。福島のトリチウム放出をめぐっては、2013年12月から検討されてきました。経産省汚染水処理対策委員会で「トリチウム水タスクフォース」が設置されて以来、6年以上かけた議論の末、今年2月10日に最終報告書が出されところです。報告書を出したのは、同委員会の「多核種除去設備[ALPS]等処理水の取扱いに関する小委員会」(ALPS小委員会)です。報告書は、海水で希釈後放出という海洋放出のメリットを強調していますが、最終的処分方針の決定は、「関係者の御意見を伺う場を開催」後になされることになっています。一方、1年間で福島の20倍と経産省自身がいう再処理工場の年間海洋放出計画については、政府の特別な委員会の設置もなければ、マスコミ報道もほとんどないという状態です。

もう一つは、日本原燃のトリチウムの液体放出「管理目標値」が2018年4月16日にそれまでの1京8000兆ベクレルから9700兆ベクレルに変更されたのにもかかわらず、経産省が古い数字の方を使ったということです(詳細は次の記事に:六ヶ所再処理工場の試験で海に放出されたトリチウムは、福島総量の2.5倍?5倍?─本格運転で毎年海洋放出するのは?)。この変更は、せん断処理する使用済み燃料の冷却期間を4年から15年以上に変更したことを反映したものでした。トリチウムは半減期が12.3年と比較的短いため、長期保管のものではその量が顕著に減っていきます。完成が遅れ続けたことを「活用」して、様々な核種の管理目標値を下げた格好です。経産省は、この事実を知らないで古い数字を使ったのか。そうでないとすると、古い数字を使った意味は?国会での発言ですから、経産省は、この点について明確に答える責任があります。

上記記事の表「トリチウム放出量まとめ」に今回の経産省の数字を追加すると次のようになります。

トリチウム放出量まとめ(修正2020年5月15日)
福島第一原発タンク保管総量(30年かけて放出?)860兆ベクレル備考
六ヶ所再処理工場海洋放出
放出実績アクティブ試験 2006-08年(425トン)2150兆ベクレル福島総量の2.5倍
上記試験中2007年10月523兆ベクレル福島総量の60%
フル操業(800トン/年)海洋放出計画年間海洋放出管理目標9700兆ベクレル福島総量の約10倍
実際の海洋放出量 アクティブ試験から推定?福島総量の約5倍?
経産省による年間推定海洋放出量*1京8000兆ベクレル福島総量の20倍

*注:2020年5月15日衆議院経済産業委員会における経産省資源エネルギー庁村瀬佳史電力・ガス事業部長の説明

*出典:国会中継 2020年5月15日 宮川伸(立国社)経済産業委員会 六ケ所再処理工場の審査書案了承について(動画)

議事録:第201回国会 衆議院 経済産業委員会 第10号 令和2年5月15日 より、経産省資源エネルギー庁 村瀬佳史 電力・ガス事業部長 発言部分

○村瀬政府参考人 お答え申し上げます。  ─(略)─  今後政府として方針を決定していくものであり、具体的な数字を前提とした比較をすることは困難でありますけれども、先ほど答弁にあったように、貯蔵されているALPS処理水に含まれるトリチウムの量は八百六十兆ベクレルでございますので、六ケ所再処理工場において年間の最大処理量である八百トンの使用済み燃料を再処理した場合におけるトリチウムの推定海洋放出量が約一京八千兆ベクレルであることを考えますと、この比較でいえば、機械的に計算しますと、福島第一原発における貯蔵量の約二十倍となるわけでございます。

5月13日の原子力規制委の会合では、田中知委員と更田委員長が使用済み燃料のせん断までの冷却期間を4年から15年以上に変えたことによって、事故時と通常時の両方で想定される放射能量や発熱量の値が下がったことの重要性を強調しています。更田委員長は、「一番大きなインパクトを与えているのは冷却期間の変更である」と述べ、直後の記者会見でも同様の表現を繰り返しています。(議事録参照)。経産省が二日後の15日に古い数字を使ったのはなぜでしょうか。ちなみに、村瀬部長は、後で触れる5月19日の衆議院原子力問題調査特別委員会でも同様の発言をしています。

「フル稼働になるわけではない」か?

更田委員長は、13日の委員会後の記者会見において共同通信の記者の質問に答えた際、福島のトリチウムの量と比べ、六ヶ所再処理工場のトリチウムの管理目標値が非常に高いことを認めた後、「工場はフル稼働になるわけではないし、管理目標値を下回るトリチウム放出量」となると述べています。

これはただ再処理という事業に対して、このトリチウムの放出というのはもちろん実際、プルトニウムの蓄積量の制限等がありますので、先ほどお尋ねがあったようにフル稼働になるわけではないし、管理目標値を下回るトリチウム放出量にはなるわけですけれども、ただ、[放出の際の濃度限度を定めた]告示濃度制限を守れる限りにおいては、環境に与える影響は小さいということは確認をされていますので、そういった意味で、いわゆる正当化はされているのだろうと思います。

これは、2018年7月の日米原子力協力協定自動延長に絡んで、同7月3日に閣議決定されたエネルギー基本計画に「プルトニウム保有量の削減に取り組む」という文言が入り、同7月31日に原子力委員会が発表した方針が、我が国は「プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は…現在の水準を超えることはない」と宣言したことを念頭に置いてのものと思われます。しかし、「工場はフル稼働になるわけではない」と言い切れるでしょうか。

原子力委の「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方」(2018年7月31日)は、確かに、我が国は「プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は、以下の措置の実現に基づき、現在の水準を超えることはない」とし、「再処理等の計画の認可(再処理等拠出金法)に当たっては、六ヶ所再処理工場,MOX燃料加工工場及びプルサーマルの稼働状況に応じて、プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う」と述べています。

そして、具体的なプロセスについて経産省は、例えば、2018年3月20日に総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会に提出した資料で次のように説明しています。

②電気事業者がプルトニウム利用計画を公表して、その妥当性を原子力委員会が確認
③再処理等拠出金法に基づき、使用済燃料再処理機構が再処理量やMOX加工量等を記載した実施計画を策定し、原子力委員会の意見も聴きつつ経済産業大臣が認可。
これにより経済産業大臣がプルトニウムの回収量をコントロール
といった仕組みの下、プルトニウムの適切な管理と利用を図っていく。

更田委員長は、これらの文書を素直に読んで「フル操業にはなるわけではない」と考えているのでしょう。しかし、2003年8月の原子力委員会決定にも今回のと似たような規定がありましたが、それは空手形に終わっています。2003年決定も、次のように厳格なものとの印象を与えるものでした。「電気事業者は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を毎年度プルトニウムを分離する前に公表することとする。利用目的は、利用量、利用場所、利用開始時期及び利用に要する期間の目途を含むものとする…この措置により明らかにされた利用目的の妥当性については、原子力委員会において確認していくこととする。」ところが、現実には、六ヶ所再処理工場で分離されたプルトニウムはMOX工場完成以降に利用を予定とするというだけの電力会社の「利用意図宣言」を原子力委が「確認」するとの儀式が行われてきたにすぎません(詳しくは次を参照:プルトニウム削減の第一歩は再処理工場運転放棄 核情報 2018. 6.22)。

今回の決定は2003年の決定と如何に異なるのか。原子力委は現在、2003年の仕組みは、当時間近に迫っていると見られた工場の運転開始を正当化するための「言い逃れ」だったと評価しているのか。今回の決定にある「水準」とは何を意味するのか。「MOX加工量等を記載した実施計画」とあるが、再処理工場の完成から1年遅れで完成と予定されているMOX工場の運転が安定するまで「加工量」の予定は認めないのか。更田委員長は、日本の保有量が絶対に2018年7月現在の約47トンを超えないように再処理工場の運転が調節されると想定していると推測されるが、その具体的なしくみは?これらの点について、詳細な説明が原子力委、経産省、使用済燃料再処理機構、日本原燃などからない限り、更田委員長のように宣言を素直に受け入れるわけにはいきません。

日本原燃は、次のように使用済み燃料の処理量を上げて行って、2025年度からフル操業を継続することを計画しています(カッコ内はプルトニウム分離量)。2022年1-3月80トン(0.5トン)、22年度320トン(3トン)、23年度480トン(4.5トン)、24年度640トン(5.5トン)、25年度800トン(7トン)(詳しくは次を参照:六ヶ所フル稼働なら福島処理水のトリチウム全量の10倍以上を毎年放出 核情報 2020. 4. 14)。更田委員長の解釈が正しいなら、この計画は、再処理工場運転開始の手続きや技術の面で問題が全くないとしても、絵空事ということになります。規制委や原子力委は、今の時点でなぜそのことを指摘しないのでしょうか。

もう一つ忘れてはならないのは、英国保管分約22トンの存在です。2018年末現在日本が保有する45.7トンのうち、英国保管分は21.2トン。これに加えて、すでに再処理による分離が終了している日本分0.6トンが近々計上予定となっています。ところが、英国には、MOX燃料製造工場がなく、この約22トンをどうするのかが決まっていません。英国側は、日本が適切な代価を払えば、これを英国籍の約120トンのプルトニウムと一緒に処分していいと申し出ています。日英両国で合意が成立すれば、その瞬間、約22トンが日本の帳簿から姿を消します。フル操業では年間800トンを処理して約7トンのプルトニウムを取り出すというのが日本原燃の計画ですから、日英合意だけで約3年分のフル操業が保証できる計算です。つまり、例え日本のプルトニウムが約46トン以上にならないように厳密に再処理量を管理できるとしても、一年たりとも、フル操業には至らないと言い切ることはできません。

英国保管分の処分を英国に任せること自体はいいのですが、「現在の水準」が英仏保管分を合わせたものとなっているため、核兵器国英国での保管分と同量のプルトニウムが非核兵器国日本国内の保管分として短期間で増えてしまう可能性があるという点でこの問題は重要です。

なお、更田委員長の発言にある「先ほどお尋ねがあったように」というのは、このやり取りの前に、テレビ朝日の記者が次のように述べて質問を始めたことに言及したものです。

この施設は、今現在、MOX対応炉というものがたった4基しかない状況の中で、せいぜい年間1トン程度のプルトニウムを今後作っていく、MOX燃料を作っていくという、非常に低生産の状況下でスタートしていくように思うのですけれども…

この前提が正しいかどうか、上に見た状況と、次に見る経産省の見解とを合わせて評価する必要があります。

竣工後数年でフル稼働に、それでも消費可能、と経産省

経産省は、5月19日の衆院原子力問題調査特別委員会で、六ヶ所再処理工場のフル稼働で取り出されるプルトニウムと既存分と合わせて、プルサーマル計画で消費できると述べています。質問したのは、荒井聰議員(立憲民主党)、答えたのは、前述のトリチウム放出量問題で登場した村瀬佳史電力・ガス事業部長です。要約すると

エネルギー基本計画において、「利用目的のないプルトニウムを持たない」という原則を謳ってあり、保有量の「削減に取り組む」ともある。
現時点で動いているプルサーマル炉は、高浜3・4号、玄海等4基。
この4基で年間2.3トンのプルトニウムが消費可能。
さらに6基が原子力規制員会の審査を受けている。
これらがプルサーマルできる状態になると、プラス3.7トンになる。
これらを合わせた10基の合計で、年間約6トンの消費となる。
事業者のプルトニウム利用計画は16-18基をプルサーマル炉にするというもの。
これが計画通りにいくと、合計年間8.5-10トンが消費可能。
プルトニウムの生産の方は、六ヶ所再処理工場が竣工してすぐにはピークの生産はできないが、数年でフル稼働に入り、年間6.6トン生産となる。
したがって、事業者の計画に沿って行けば、生産されるもの以上の消費をし、今あるストックも、時間をかけてということになるが消費可能である。

出典:2020年5月19日衆議院原子力問題調査特別委員会(動画)

なお、同様の内容は、経産大臣の発言にも見られます(経済産業大臣の定例記者会見の概要 2020年5月15日)。

原子力発電所新規制基準適合性審査状況とMOX利用炉 (改訂:2020年 2月26日現在)でデータを確認しておきましょう。

1)稼働中のMOX利用炉4基:高浜3・4号、玄海3号、伊方3号
2)規制委の審査の合格は得たが、稼働に至っていないMOX利用計画炉:東海第2
3)規制委で審査中のMOX利用計画炉5基:泊3号、浜岡4号、島根2号、敦賀2号、大間(全炉心MOX炉、建設中)

経産省のいう審査中6基は、2)と3)を合わせたものでしょう。これら6基がすべて運転開始となるかどうか、開始するとしていつのことになるかは、五里霧中ともいうべき状態です。計画の16-18基となるとなおさらです。そもそも、1997年2月21日に電気事業連合会が発表したプルサーマル計画「今後の原子燃料サイクルの推進について」では2010年までに16-18基で導入となっていたのが、2009年6月12日の「プルサーマル計画の見直しについて」で、「遅くともMOX燃料加工工場が操業開始する2015年度までに、全国の16~18基の原子炉でプルサーマルの導入を目指してまいります」と変更になったという経緯があります。(変更を反映したプルトニウム利用計画は次を参照:六ヶ所再処理工場回収プルトニウム利用計画(平成22年度)2010年3月15日)

再処理工場の稼働計画とMOX利用炉の再稼働の時期に関する見通しを合わせて具体的に議論しないで、事業者の計画通りにいけば、いつかうまくいくはずです、というだけでは、核兵器利用可能物質の蓄積についての国際的懸念に応えるものにはなりません。

いずれにしても、先に見た更田委員長の発言と経産省側の発言はつじつまが合うのか否かについて、両者と原子力委員会、使用済燃料再処理機構、日本原燃などを同時に国会に招いて、明らかにする必要があるでしょう。

経産省副大臣と議員の珍問答 ガラス固化体でMOX燃料を作る?

なお、5月19日衆院原子力問題調査特別委員会での逢坂誠二議員(立憲民主党)と牧原秀樹副大臣のやり取りは必見です。副大臣は、用語の意味をご存じないが、再処理は正しいと主張している(言わされている)ように見受けられます。行ったり来たりのやり取りのエッセンスを抽出するとこんな感じです(議事録が公開となったら、資料編に追加予定)。

問 再処理推進理由は
答 高レベル廃棄物からMOX燃料を作る
問 その場合の高レベル廃棄物ってなあに?
答 ガラス固化体

ガラス固化体は、使用済み燃料を再処理した際に出てくる高レベル廃液を固めたものです。これをどう処理してもMOX燃料にはなりません。使用済み燃料をそのまま最終処分場で処分すべきものとみなした場合には、使用済み燃料を「高レベル廃棄物」と呼ぶことになります。
使用済み核燃料 再処理か乾式貯蔵か

参考

資料編

審査書案を了承した原子力規制委員会(5月13日開催)関連

田中知委員: 我々は重大事故等への対処については機器が内包する放射能量等に基づいて、実態に即した対策の優先順位、手順等の検討が重要であるとの認識の下、現実的な冷却期間の設定を求めたところでございます。その結果として変更があったところでございますが、例えば、せん断処理するまでの冷却期間については15年以上とすることになってございます。冷却期間が短いと、御存じのとおり放射能量や発熱量が多くなって、それに見合った重大事故等対策が必要になるのは当然でございます。特に 蒸発乾固のときの挙動が重要なRu-106につきましては半減期が374日ですので、半減期によって随分と量が違ってくるということで、現実的な数字を言っていただいて、それにのっとって我々が確認したところでございます。

更田委員長: 一番大きなインパクトを与えているのは冷 却期間の変更であると。これは原子力発電所との対比を取るのは正しくないのだけれども、 閉じ込めに対する考え方がそもそも再処理施設は全く違う。通常時であっても切断に伴って一定の放出を前提としている。通常運転というのは切断したときに燃料棒のギャップガ スが、これは換気系を通じて大気で出てくる、核種で言えば要するにクリプトンですけれども。これを低減させる方法は冷却期間を長くするしかないのです。これが非常に大きく効く。更に言えば、万一の事故が起きたときの想定も、冷却と放出量の双方に対して切断に至 るまでの冷却期間は非常に大きな影響がある。したがって、審査に入るときの前提の議論であったわけですけれども、冷却期間を長く取るということが通常時の放射性物質の放出、それから、事故のときの安全裕度に対する影響が最も大きくて、これが今回の結果として、設計として、審査が与えているものの中で恐らく一番インパクトが大きい。

……
○記者 共同通信のヒロエといいます。よろしくお願いします。
再処理工場が稼働しますと、放射性物質が環境中に放出されることにはなりますけれども、例えばトリチウムに関して言えば、東京電力福島第一原発の中で保管されているものと比べても多い量が放出されるということになりまして、そのことに対してどのように安全性を規制したかというところを御説明いただけますでしょうか。
○更田委員長 今、お尋ねのものに関して言うと、今、浮かぶもので言うと二つあって、一つは気体廃棄物として燃料を切断するとクリプトンというものが出ていきます。地球上における大気中のクリプトン濃度はこの30年間で上昇していて、その上昇の理由は各国の再処理事業だと言われています。
しかしながら、人の被ばくに対する影響を言うと、ラドンというその他の核種に比べるとはるかにその被ばくの影響が小さいので許容されているわけですけれども、ただ、先ほど申し上げたように、やはりラドンの放出量でも少ないに越したことはないということで、冷却期間を長く取ることが、それに有利に働いている。
それから、トリチウムですけれども、確かにおっしゃるように、日本原燃六ヶ所再処理施設の管理目標値で、東京電力福島第一原子力発電所のタンクにたまっている処理済水を放出しようとすると、余り正確に言えないけれども、半年かからないのだと思います。
ですから、そういった意味で、トリチウムという核種だけに限って言うと、六ヶ所の再処理施設の管理目標値というのは極めて、福島第一原子力発電所等に比べると非常に高い値になっています。
これはただ再処理という事業に対して、このトリチウムの放出というのはもちろん実際、プルトニウムの蓄積量の制限等がありますので、先ほどお尋ねがあったようにフル稼働になるわけではないし、管理目標値を下回るトリチウム放出量にはなるわけですけれども、ただ、告示濃度制限を守れる限りにおいては、環境に与える影響は小さいということは確認をされていますので、そういった意味で、いわゆる正当化はされているのだろうと思います。
○記者 減らすための規制の手段というのは、先ほどおっしゃった燃料の冷却期間を極力延ばすというのが一番効いてくるのですか。
○更田委員長 もちろんです。それが一番効いてきます。原子炉で運転をして、止めて、そこから冷却されて、再処理施設に運搬されて、そこで切断にかかるまでのこの間の期間をできるだけ長く取ることが、再処理事業に伴う放射性物質放出を下げる上で一番効いてきます。
○記者 地元の方の健康影響というものもないと考えていい。
○更田委員長 健康影響を懸念しなければならないようなレベルの放出量ではありません。

プルトニウム削減方針関連

我が国の原子力利用は、原子力基本法にのっとり、「利用目的のないプルトニウムは持たない」という原則を堅持し、厳に平和の目的に限り行われてきた。我が国は、我が国のみならず最近の世界的な原子力利用をめぐる状況を俯瞰し、プルトニウム利用を進めるに当たっては、国際社会と連携し、核不拡散の観点も重要視し、平和利用に係る透明性を高めるため、下記方針に沿って取り組むこととする。

我が国は、上記の考え方に基づき、プルトニウム保有量を減少させる。プルトニウム保有量は、以下の措置の実現に基づき、現在の水準を超えることはない。

  1. 再処理等の計画の認可(再処理等拠出金法)に当たっては、六ヶ所再処理工場,MOX燃料加工工場及びプルサーマルの稼働状況に応じて、プルサーマルの着実な実施に必要な量だけ再処理が実施されるよう認可を行う。その上で、生産されたMOX燃料については、事業者により時宜を失わずに確実に消費されるよう指導し、それを確認する。
  2. プルトニウムの需給バランスを確保し、再処理から照射までのプルトニウム保有量を必要最小限とし、再処理工場等の適切な運転に必要な水準まで減少させるため、事業者に必要な指導を行い、実現に取り組む。
  3. 事業者間の連携・協力を促すこと等により、海外保有分のプルトニウムの着実な削減に取り組む。
  4. 研究開発に利用されるプルトニウムについては、情勢の変化によって機動的に対応することとしつつ、当面の使用方針が明確でない場合には、その利用又は処分等の在り方について全てのオプションを検討する。
  5. 使用済燃料の貯蔵能力の拡大に向けた取組を着実に実施する。加えて、透明性を高める観点から、今後、電気事業者及び国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)は、プルトニウムの所有者、所有量及び利用目的を記載した利用計画を改めて策定した上で、毎年度公表していくこととする。

※六ヶ所再処理工場は2021年度上期、MOX燃料加工工場は2022年度上期に竣工を計画。

発言者一覧(動画へのリンクはYoutubeに変更)

説明・質疑者等(発言順): 開始時刻 所要時間
   江渡聡徳(原子力問題調査特別委員長)  13時 21分  02分
   古田圭一(自由民主党・無所属の会)  13時 23分  39分
   岡本三成(公明党)  14時 02分  19分
   本多平直(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム)  14時 21分  21分
   逢坂誠二(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム)  14時 42分  19分
   玄葉光一郎(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム)  15時 01分  13分
   荒井聰(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム)  15時 14分  26分
   藤野保史(日本共産党)  15時 40分  21分
   足立康史(日本維新の会・無所属の会)  16時 01分  19分
 
答弁者等
 
大臣等(建制順):
   横山信一(復興副大臣)
   牧原秀樹(経済産業副大臣)
   中野洋昌(経済産業大臣政務官兼内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官)
   更田豊志(原子力規制委員会委員長)

日本原燃の使用済核燃料再処理工場
Q:日本原燃の再処理工場が13日、規制委の6年以上の審査を経て新規制基準に適合する見通しとなりました。ただ、原燃の目指す2021年度前半の完成は今後の審査もあり、難しいと思われます。そのことも踏まえ、審査書案了承の受け止めをお願いします。
また、再処理工場が完成しても、MOX燃料を使える原発は4基しかありません。核燃料サイクル政策の難しさをどう捉え、どう解決していくおつもりか、大臣のお考えをお願いします。
A:5月13日の原子力規制委員会で日本原燃、六ヶ所再処理工場の事業変更許可に係る審査書案が了承されたものと承知をしております。今後、パブリックコメントの実施等の手続が残っており、審査の過程であることから、現時点においてはコメントは差し控えさせていただきたいと思っております。
なお、プルサーマルを行いMOX燃料を使用する計画を有している原発のうち、現在高浜原発3・4号機、玄海3号機など4基が再稼働済みであります。更に6基が原子力規制委員会の審査を受けており、今後審査が進み、プルサーマルを実施する原発の再稼働が増えれば、プルトニウムの消費も進んでいくものと見込まれると考えております。
引き続き政府としては、エネルギー基本計画に基づき、直面する課題を一つ一つ解決しながら核燃料サイクル政策を推進をしてまいりたいと考えております。

プルサーマル(MOX使用)計画変遷関連


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