核情報

2024.03.24

資料 新アジェンダ連合決議案と日本の投票──田窪雅文(現 核情報主宰)1999年11月16日付けメモ

1999年11月12日に開かれた社民党の外交防衛部会で外務省の佐野利男軍備管理軍縮課長(当時)らが「新アジェンダ連合の国連決議案への対応について」説明を行った際、同席し質問する機会を得ました。以下、その際のやり取りのまとめを資料として掲載します。

*新アジェンダ連合(NAC)は、1998年6月9日に、『核のない世界に向けて──新しいアジェンダの必要』という宣言を発表した8カ国(ブラジル、エジプト、アイルランド、メキシコ、ニュージーランド、スロベニア、南アフリカ、スウェーデン)を指す。社民党外交防衛部会では、NACが1999年に国連総会に提出した同名の決議案についての外務省の見解が説明された。

参考:

佐野利男 軍備管理軍縮課長の冒頭説明

日本のアプローチと異なり、新アジェンダ連合の決議案は対立的なもので、不信感に基づいている。核保有国は新アジェンダ連合を相手にしておらず、まったく話し合いをしていない。また、決議案には、核抑止力への不信感があることが問題だ。(筆者による要約。以下同様)

このような説明の後、発言の機会を与えられたので、各項目ごとに、さっと支持できるかできないか明らかにして欲しいと要請したが、全文の翻訳も準備していないし、一つ一つ論じることはできないということで、いくつかの点について選択的に質疑を行った。

項目別の質疑応答


前文12 核兵器が永久に保有される見通しであることを懸念し…

外務省:核兵器国の反発を招く。これは、核保有国が核廃絶への努力をまったくやっていないとの主張だ。

前文13 NPTの各条項は、各加盟国に対して、常に、いかなる状況においても拘束力を持つものであることを強調し…

質問:日本は、この項目に関する分割投票で賛成票を投じた。これは、NATOにおける核共有がNPTに違反することを意味すると考えるが、日本はそういう立場に立つのか。米国は、戦争が始まればNPTは無効になるから、その時点でNATOの非核兵器国に配備してある米国の核爆弾をそれらの国のパイロットが運んでもNPTに違反しないとしている(NPTの批准に当たって米国政府が上院で行った説明の趣旨[1]

外務省:米国がどのような解釈を示しているかは知らない。

質問:解釈は別として、戦争になったからといって、NATOの非核兵器国、たとえばイタリアやトルコのパイロットが米国の核爆弾を積んでロシアに投下するというような事態は、NPTに違反すると考えるか。

外務省:そのような仮定の質問には答えられないが、とにかく日本はNPTの優等生であり、このパラグラフは日本にとっては問題ないとうことだ。

コメント

これは、ヨーロッパに配備されている150~180発の米国の核爆弾(B61)に関する議論である。これらを非核保有国に使わせることを前提に配備し続けるのはNPTに矛盾するとの議論が強くなっている。NPTは核の移譲を禁止しているからである。これらが撤退されると中央ヨーロッパの非核地帯化の可能性も出てくる。また、NATOにおける先制使用のオプション維持の意味が薄れてくる。

フランスの通信社は米国がこれらの核を撤退する方針を12月に発表する予定だと報じたが、米国の国防省はそのような情報はないとしている。

本文1「速やかかつ全面的な核廃絶を実現する」との明確な約束をすることを求める。

外務省:これは、核抑止を否定するものであり、問題だ。この場合の核抑止とは、生物・化学兵器及び大量の通常兵器による攻撃を、核の威嚇によって抑止することを意味する。核抑止は、重要であり、国際情勢を無視して、速やかに核をなくしてしまうことはよくない。

本文14 核軍縮及び核不拡散に関する国際会議を開催することは、他の場所で行われている努力を補足するものとなり、核兵器のない世界のための新しいアジェンダの強化に役立つと考える。

外務省:NPTの枠外でこのような会議を行うのは好ましくない。
[コメント:この条項はとくに固執すべきものではなく、分割投票を行って日本が棄権しても問題はないはずだが]

本文18 兵器の使用あるいは核兵器の使用の威嚇に対する効果のある保障をNPTに加盟している非核兵器国に提供するために、国際的な法的拘束力をもつ法的文書を締結する」ことを求める。

質問:日本はこの「消極的安全保障」に関するパラグラフについて行われた分割投票において賛成票を投じたが、生物・化学兵器による攻撃に対しても核兵器を使わないことを法的に明確化することに日本が合意したということか。

外務省:そうではない。このパラグラフには生物・化学兵器のことは何も書いていないから、これらの兵器による攻撃に対して核で応じないことを約束することに日本が合意したということではない。


TOWARDS A NUCLEAR-WEAPON-FREE WORLD: THE NEED FOR A NEW AGENDA

UN General Assembly Fifty-fourth session Agenda item 76

RESOLUTIONS ADOPTED BY THE GENERAL ASSEMBLY
[on the report of the First Committee (A/54/563)]
54/54. General and complete disarmament

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  1. 米国の解釈については以下を参照。米国解釈Q&A 1967年4月28日 [核情報粗訳] ↩︎


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